[畑中たけし] 6月定例市議会 本会議質疑、反対討論

◎彩都特定土地区画整理事業について

◎臨時職員一時払金損害賠償請求権の放棄について

◎反対討論「議員発第11号 債権の放棄について」


平成20年度大阪府茨木市一般会計補正予算質疑(08.06.12)

(畑中一問目)大きな一点目として、彩都特定土地区画整理事業に関連して、おたずねいたします。

 第一に計画の縮小の協議経過、縮小についての茨木市の認識、茨木市の対応についておたずねいたします。
国が「閣議決定」で、UR都市再生機構が全国で実施している、いわゆる「大都市圏ニュータウン事業」を2012年までにすべての工事を終わらせ、さらに2017年に事業を完了させるという方針を明確にし、機構が個別の事業について、その具体的内容の発表を始めました。その最初が「国際文化公園都市(彩都)」であるといわれています。また、機構の資料によると、いま機構が全国の大都市圏で実施中の事業は48地区・施行(予定)、総面積で9908ヘクタール(甲子園球場の約2,500カ所分)にのぼるとされています。総面積の上位は千葉県船橋市などの千葉北部ニュータウン、大阪府茨木市などの国際文化公園都市、兵庫県三田市の北摂ニュータウン、茨城県つくば市の葛城ニュータウン、東京都八王子市の南八王子ニュータウンであるとし、彩都はその中でも2番目の規模を持つ計画です。

こうした中で、関係各地区では事業の進捗状況により差はありますが、地権者をはじめ、関係地方自治体などで、動揺と危惧の声が広がっています。とくに彩都計画の縮小及び事業内容の変更を、地権者や地方自治体がどのような対応をするのかが全国で注目されています。いずれにしても土地区画整理事業はリスクの多い手法であります。それを知りつつ推進してきた国と機構、積極的に参画してきた地方自治体。結局、今回の撤退で影響を受けるのは一般住民、個人地権者、新住民などです。機構は彩都の計画の縮小と今後の予定については事前に大規模土地所有者、関係地方自治体等とは了解の上で発表したとしています。その協議経過及び計画変更の影響、また今後の対応についておたずねいたします。また機構が個人地権者への説明会を4月末に開催したと言われていますが、どのような意見が出されたのかも、おたずねいたします。またこの無謀な計画を進めてきた歴代の市長の責任は重大です。市長の見解を求めます。

(松田市理事)
■彩都の事業再評価に関する協議経過、市の認識と対応について
○ 彩都に係る事業再評価につきましては、昨年度末に、都市再生機構において実施され、本年4月2日に、「計画を見直した上で事業継続」という対応方針の通知を受けたものであります。昨年度の段階で、都市再生機構より年度内には彩都事業の再評価をおこなう予定との連絡を受けておりましたが、再評価の内容については協議をおこなった経緯はございません。市といたしましては、この対応方針に基づき、今後とも彩都事業が継続されるものと認識しており、都市再生機構に対して、早期に見直し案を作成し、地権者の合意形成を図るよう求めております。彩都事業につきましては、代表質問に対する市長答弁の中でも申し上げましたように、これまでと同様、大阪府をはじめとする関係機関等と連携して、都市再生機構と協議・調整を進め、事業の継続をはかる考えであります。なお、地権者への説明会では、事業の継続に向けた意見が大半でございました。

(野村市長) 彩都事業における見解と言うことでございますが、国際文化都市彩都の整備計画につきましては本市の総合計画にも位置づけられておりまして、本市の将来にとって重要なプロジェクトでございます。今回、再生機構の事業再評価によりまして「計画を見直した上で事業継続」という報告を受けておりまして、決して無謀な計画とは考えておりません。

 

 第二に機構の彩都特定土地区画整理事業の現状、今後の見通しと茨木市の対応についておたずねいたします。
機構の事業資金は財務省所管の「財政投融資」でありますが、財務省の「財政投融資総点検について」という文書では、「都市再生機構は財務諸表をみると、債務超過とはならないものの、主にニュータウン整備事業資産に評価損が生じた事により、(単年度で)7300億円に及ぶ欠損金が計上されている。これを踏まえ、将来の国民負担の発生を未然に防止するため、すでに取得した土地の早期処分など最大限の自助努力を行うと共に、ニュータウン事業から早期に撤退し、同事業の財政投融資の活用を終了させる」としています。
機構の説明によると機構が彩都区画整理事業において「2006年度」までに実施した事業実績額は合計約964億円としています。また「2007年度」から「2012年度」に西部地区における事業予定額は合計約382億円としています。さらに2012年度に工事を完了し、2013年度から2018年度に事業完了手続き行う。「現在、12年度までの西部地区の工事内容について府・市と協議中」とし、したがって、「閣議決定」に基づき2012年度中に工事を完了するため、東部地区は事業中止。中部地区についても事業着手予定なしとしています。
2012年度までの西部地区における、工事計画および工事の内容に付いての機構から示されている協議内容を明らかにするよう求めます。
問題は本事業について、機構は多額の欠損金を計上する事が必至であるということです。この事業の主な財源は区画整理事業により確保した保留地の処分金でありますが、地価の下落と宅地需要の減退で処分はほとんど進んでいません。(因みにガーデンモール彩都−平和堂等の出店用地も借地です)このままでは資産の評価損により多額の欠損金を生じ、将来国民の税金で処理することとなります。さらに機構は西部地区と東部地区に地権者としての用地も約109f(素地)も保有していますが、こちらも同様の状況にあります。したがって欠損金を最小限にくい止めるためにも、今後予定している約382億円の事業予定額を区画整理事業完了に必要な範囲で最小限に圧縮する必要があります。本事業の現状認識と茨木市の西部地区の区画整理事業についての茨木市の対応について、おたずねいたします。さらに事業開始以来、茨木市が公共・公益施設整備のために、機構所有地又は保留地から取得した用地の総面積、総金額、事業別面積及び取得金額を明らかにするよう求めます。本予算で提案されている西部地区コミセンの取得予定面積、取得予定金額についてもおたずねいたします。

(松田市理事)
■西部地区の現状、今後の見通しと市の対応について
○西部地区につきましては、平成20年3月末時点で、西部地区の約85%の造成が完了および工事中となっており、その内、まちびらき区域が約120ヘクタールに達しております。今後の工事計画等につきましては、主に茨木箕面丘陵線西側の造成を本格的に進め、平成25年度末には、ほぼ造成工事が完了する予定で協議を進めております。市といたしましては、今後も、順調に区画整理事業が進められていくものと認識しており、適宜、関連公共公益施設の整備を進めていく予定であります。

 

 第三に茨木市が実施する本事業に関連する公共・公益施設整備についておたずねいたします。
大阪府が彩都開発関連公共公益施設整備に投入した府負担額は07年度期末でモノレール事業も含めて約312億円。大阪府は財政破たんの中でも、今年度も都市計画道路や砂防ダム建設で約8.3億円を予算化しようとしています。いま全国で多くの地方自治体が国の言いなりになって、財政を無視した公共事業を行い、多額の借金を背負う一方、「借金の返済は地方交付税で全額又は相当額を措置する」との約束を反故にした国の「税制改革」と、独自の税収も落ち込んだため、財政破たんにおちいっています。そして今、「財政再建」を口実に福祉や教育予算の削減が進められています。この典型が大阪府です。

 茨木市が彩都開発関連公共公益施設に投入した市負担額は08年度末で合計約118億円、内一般財源が約36億円、起債又は機構の立て替え施行分が約82億円であります。これを今後20〜30年間で返済することになりますが、当然金利も付くので、その返済総額は約131億円になります。これを均等で返済するとなると単年度で約6.5億円となります。茨木市は今後、公益施設として西部地区ではコミセン、図書館、消防署、市役所出張所。公共施設として地区内公共下水道、区域外都市計画道路山麓線、国文3号線整備を予定しています。また茨木市政は、借金の返済の財源を、開発地域に進出する企業や新たに住む住民からの税収からと当てにしていましたが、見通しを大きく下回っています。計画縮小でこれに一層の拍車がかかることとなります。またこれまで税金からの支出はほとんどないという事前の説明も、国や機構の財政難や採算の悪化から、学校建設などの市の負担が増えてきています。茨木市が実施する公共公益施設整備についても、新住民の生活環境の整備も配慮しながら、必要最小限にとどめるべきと考えます。見解を求めます。また国のいいなりになって無謀な開発を共に推進してきた大阪府や茨木市にも大いに責任はありますが、機構を使ってこうした見通しのないニュータウン事業を進めてきた最大の責任者は国であります。国が閣議決定でニュータウン事業からの撤退を進めるなら、その後遺症で苦しむ地方自治体の財政支援で責任を取るべきであると考えます。市の見解を求めます。

(松田市理事)
■公共・公益施設用地の取得について
○都市再生機構から取得した事業別の面積及び取得金額につきましては、

彩都西小学校用地の一部 13,451u 約7億4000万円
彩都保育園用地      2,000u 約1億9500万円
モノレール彩都西駅自転車駐輪場用地
850u  約1億2500万円
彩都西中学校用地    25,103u 約14億1800万円

でそれぞれ取得しております。その総事業面積は、41,404u、総取得金額は、約24億7800万円でございます。なお、(仮称)彩都西コミュニティセンターは、平成20年度において、事業面積約1,600uを、2億4000万円で取得する予定でございます。

 

 第四に公共公益施設整備に関連して、具体的におたずねいたします。
茨木市が関係する公共・公益施設の「機構負担金」についておたずねいたします。
一つめに以前の答弁では決定してるのは山麓線で1.1億円、近隣5号公園で2.5億円、天王川で1.3億円、流域下水処理場で 1.8億円、流域下水道茨木箕面2号幹線で1.4億円、公共下水道勝尾寺2号汚水幹線で0.9億円、ごみ処理施設で40.4億円との事でありますが、その他の事業も含めて、これまでの具体の歳入状況についておたずねいたします。
二つめに、当時の下水道部長の答弁では「大阪府が実施する北部丘陵開発にかかる安威川流域下水道茨木箕面2号幹線の茨木市の建設負担金は18.3億円で面積比、流量比を勘案して、茨木市と機構の負担割合は7:3または6:4になる」との答弁でありましたが、その結果についておたずねいたします。また市の財源措置の内訳についてもおたずねいたします。三つめに、公共下水道 地区外 幹線の勝尾寺汚水1号幹線、同じく2号幹線、安威汚水第1号幹線の茨木市と機構の負担割合はどうなるのかおたずねいたします。

(松田市理事)
■安威川流域下水道茨木箕面2号幹線と公共下水道地区外幹線の市と機構の負担割合と歳入状況について
○茨木箕面2号幹線の費用負担は、本市が負担する事業費の内、流域面積を元に彩都の土地区画整理事業相当分を機構の負担と考え、最終的には本市と機構の負担割合は約8:2となり、私憤他につきましては全額起債となっております。
また、公共下水道の各幹線の負担割合は、勝尾寺汚水第1号幹線は市が3割、機構が7割。勝尾寺汚水第2号幹線は市が2割、機構が8割。安威汚水第1号幹線につきましては市が約9割、機構が1割であり、それぞれ全額受け入れております。

 

 第五に都市計画道路 山麓線および国文3号線整備についておたずねいたします。
以前の土木部長の答弁では「市施行分の事業費は50.2億円、負担内訳は国が25.1億円、機構が2.5億円、市が22.6億円とし、機構直接施行分の事業費は27億円、負担内訳は国が12.5億円、機構が7.25億円、市が7.25億円、合計総事業費は77.2億円、負担内訳は国が36.6億円、機構が9.7億円、市が30.7億円である」との事でした。いずれにしても、現時点でも市の負担は約31億円です。一つめに、茨木市が公社取得分も含めて、都市計画道路 山麓線および国文3号線の用地取得総面積、取得率、総金額についておたずねいたします。また計画縮小によって、東部地区通過部分の整備はどうなるのか、さらに中部地区・区画整理事業が不可能となった場合、機構の直接施行も不可能となります。その結果、国負担と機構負担はなくなると、更に市負担は20億円増え、市の負担は50億円を超えます。彩都計画縮小の中で、あらためて、都市計画道路 山麓線および国文3号線の緊急性、優先性が問われています。少なくとも現時点で用地購入の中止と延期をすると共に、事業全体の見直しを求めます。答弁を求めます。

(松田市理事)
■都市計画道路山麓線および国文3号線整備について
○平成19年度末現在で、この路線の用地取得総面積は、46,636.28uで、取得率は合計で75.6%、また用地取得にかかる総金額は約18億円となっております。
次に、東部地区内の山麓線については、事業評価監視委員会の意見にもありますように、都市再生機構にたいし、一定の責務を果たすよう強く要請してまいります。山麓線および国文3号線整備については、彩都計画が見直しの上時宜用継続となっておりますので、引き続き整備促進に努めてまいります。

 

 

 大きな二点目として、臨時職員一時金支払損害賠償請求権放棄についてお尋ねいたします。

 第一に裁判の経緯および請求権放棄についての市の見解をおたずねします。
この問題は、茨木市が平成7年度から16年度にかけて臨時職員に対する一時金を条例によらずして支給していたのは違法な公金支出であるとして、地方自治法第242条の二、一項第4号に規定されている住民訴訟(四号訴訟)が提起され、平成20年1月30日に一審の地裁判決がおりたもので、判決では時効にかかる平成16年以前については原告側敗訴となりましたが、平成16年度支給分、つまり野村宣一市長が支出した部分については訴えが認められ、支出分6689万円及び遅延損害金を茨木市長は野村宣一氏に請求せよとしたものです。その後、原告、被告双方とも大阪高裁に控訴しているそうですが、そもそもこうした住民訴訟が提起されるにいたった経緯、一審における茨木市の主張、地裁判決を不服として控訴審において双方が争そっている事項についてお尋ねいたします。また本件損害賠償請求権の放棄の可否についての市の見解をお示し下さい。

(津田副市長)住民訴訟の質問に関して答弁する。まずその経緯と市の主張、双方が争っている事項についてであるが、まず経緯としては、その裁判、臨時職員に対し毎年6月と12月の二回に分けて増給分、これは一時金であるが、一律6月期に4万円、12月期に4万5千円を支給していたということが違法であるということで、平成17年9月に提起されたものである。この間、11回の審理をへて、平成20年1月30日に大阪地方裁判所において判決が言い渡された。その判決において、平成7年から平成15年までの請求は期限が過ぎているため不適法であるとされたが、平成16年度については、本件一時金の支給は条例の根拠を欠き違法であると判断している。臨時職員に対して一時金を支給すると言うことは、支給当時や現在の社会通念に対し違法となるべきものではないと考えて、平成20年2月8日、大阪地方裁判所の判決取り消しを求めて、大阪高等裁判所に控訴いたした。また、原告側は、期限が過ぎて不適法とされた部分を不服として控訴している。以上が経過である。

 次に、損害賠償請求権の放棄についてであるが、地方自治法96条一項第十号では、「議会は法律もしくはこれに基づく政令または条例に特別の定めがある場合を除くほか債権放棄の議決をすることが出来る」とされている。したがって債権の放棄については、法令または条例になんら特別の定めがないので、議決は有効である。

 

 第二に住民訴訟とのかかわりについておたずねいたします。
住民監査請求及び住民訴訟は市民が行政の執行を監視し、是正させる重要な権限です。住民訴訟の判決内容に背いて、請求権を放棄するなら地方自治法に認められた住民訴訟制度は重大な意義を失うこととなります。とくに判決が確定しない前に、即ち、一審判決で認められた内容を二審判決の前にその請求権を放棄するなら、住民訴訟の意義を失わしめる行為となると考えます。見解を求めます。

(津田副市長)次に、この債権放棄は住民訴訟の趣旨に反するのではないかということであるが、住民訴訟は地方公共団体の執行機関または職員による財務会計上の違法な行為又はおこたる事実が当該地方公共団体の構成員である住民全体の利益を害することに鑑み、住民が当該地方公共団体にかわって提訴し、みずからの手により違法の防止または是正をし、もって地方財務行政の適正な運用を確保するということが目的である。しかし、住民訴訟が提起されたからと言って、住民の代表である地方公共団体の議会が、その本来の権限に基づいて住民訴訟における個人的な請求に反した議決を行うことまで妨げられるべきものではないという考えが東京高裁の判決で示されている。
次に、債権放棄の議案の提出権はということであるが、議会の議決事項の一つである債権放棄、これは地方自治法96条一項第十号にあるが、この議案の提出権については、予算案のように、法に議員に提出権のない旨の規定がないことから、その提出権は長に専属するという根拠はない。したがって権利放棄の議案は、「議員」、「長」いずれからでも提出できるものと考えられる。

 

 第三に今回の債権放棄の議案提案への市の働きかけについておたずねいたします。
法には地方公共団体の長は当該地方公共団体を統括し、これを代表し(147条)、事務を管理し、およびこれを執行する(148条)と定められています。さらに長の担任事務として、長は普通地方公共団体の議会の議決を経るべき事件についてその議案を提出すること定められ(149条一項)、(149条第六項では)地方公共団体の財産の取得、管理、および処分についても規定されています。地方自治法施行令でも長の債務管理とくに消極的な債権管理は厳しく制約されています。こうした法の趣旨を鑑みても、議員が法の制約無しに市の財産を対価も無しに消滅せしめる債権放棄の議案を提案できるとするのは地方自治法の各規定の潜脱行為であり、債権放棄の議案提案権は長に専属性があるのではないでしょうか?市の見解を求めます。
今回、開会中の6月市議会後段本会議において、地裁判決による茨木市が野村宣一氏に対してもつ損害賠償請求権について、債権を放棄するという議案を、議員提案で提出するよう、議員や会派に対して、茨木市が働きかけをしていると聞いています。具体的に言いますと、六月市議会前の5月28日に津田副市長が日本共産党議員控え室に来て、朝田幹事長に「債権放棄議案用 臨時職員一時金支払損害賠償請求事件・資料一覧表」と題した平成20年5月26日付けの文書を手渡すと同時に、朝田幹事長に対して「損害賠償を求められている債権について、債権放棄の議案を市長自身にかかわることで市長提案というのも具合が悪いので、議員発としてお願いできないかと考えている。ついては(共産党も)発議者になってほしい」という意向打診がありました。その後の5月30日の幹事長会議では、津田副市長の行動を前提とした協議が行われました。不可解であるのはなぜ議員発議案用の資料を津田副市長が持って来て、各会派に発議者となることを意向打診するのかということです。提案予定者の議員や会派からの意向打診が行われるなら、まだ理解できますが、経過はそうではありません。この事実経過からわかることは、そもそも今回の債権放棄の議案提出は市当局側からの議員や会派に対する水面下の働きかけで行われようとしていることです。津田副市長の行為は明らかに副市長としての権能を逸脱したものであり、独立した機関である議会に対する重大な侵害行為であると考えます。共産党に来るくらいですから、すべての会派に行われたのは当然です。津田副市長による議員や全会派に対する非公式の働きかけの全経過と理由を明らかにするよう求めます。

(津田副市長)最後に、議員提案へ私が働きかけたという件についてである。今回の事件は、臨時職員、非常勤職員の一時金の支給が違法であると地裁の判決があり、現在、高裁に控訴しているという事実とそれに至る経過を議員各位に説明し、今後の裁判結果においてあらゆるケースを想定して、市として対応するさまざまな可能性の一つとして債権放棄の議決も選択肢の一つであると判断し、その説明をしたものである。さきほど言ったように提案権は市長と議員にあるので、債権放棄の発議の判断は当然議会でされるべきものであると考えている。決して議会の権能を侵したものではない。

 

 

(畑中2問目)彩都について、いくつか市長にもお尋ねいたします。1問目に対する市の答弁は、現状と責任についての認識が欠如しているといわざるをえません。ひとつひとつ反論する時間はありませんのでしませんが、しかしいくつか新たにおたずねいたします。第一に、機構及び事業監視委員会の対応方針「計画を見直した上で事業継続」というのは、「東部地区は事業中止。中部地区についても事業着手予定なし」と閣議決定に沿った内容です。確認を求めます。第二に、いかに府や市がじたばたしようが、閣議決定はそう簡単にひっくり返るものではありません。さらに昨年12月の閣議決定「独立行政法人整理合理化計画」では、さらに、機構に対して、「ニュータウン事業については、これまでの計画を前倒しして、供給・処分を完了するように努める」としています。これらの「閣議決定」は自民党の大臣はもとより、所管の大臣は公明党です。この閣議決定に対する市長の見解を求めます。そして、市長は「閣議決定を撤回せよ」と内閣にせまるのか、これについても市長におたずねいたします。

 次に機構の土地区画整理事業についてですが、全国の機構が進める区画整理事業の場合、保留地の処分が出来ない場合、地方公共団体が引き受けるという協定があるのが通例です。茨木市としては「今後、いかなる場合も保留地の処分に協力することはない」と明言するよう求めます。市長の答弁を求めます。

 私たちは全国のニュータウン事業の見直しにあたっては、「地元地方公共団体が新住民、個人地権者、関係市民の意見を聞き民主的な意向譲査も行い、「(仮称)見なおし委員会」のようなものを設置して、住民と共に、国や機構に対応を求めるべきではないかと提案しています。見解を求めます。

 今年度の山麓線の予算と執行内容を明確にするよう求めます。また執行を凍結するよう求めます。答弁を求めます。

(野村市長) 現状の認識が甘いのではないかという指摘であるが、決してそんなことはない。都市再生機構と十分連絡を取って現状を認識している。

 閣議決定についてであるが、これはどちらかというと、政府と再生機構との間の閣議決定である。本市の事業はあくまでも都市再生機構が主体である。であるから閣議決定の見直しを求めるのかというご質問であるが、これは求めるはずがない。

 次に、保留地を買い取る考えはということであるが、現在のところ土地を買い取る計画はまったく考えていない。

 彩都事業の見直しの委員会の設置についての質問であるが、市として事業継続をする考えであるので、そのような委員会の設置は考えていない。

(梅田建設部長)山麓線の20年度予算額と執行内容、凍結するよう求めることについてである。道路詳細設計の委託料として、2,540万円、工事費として9,600万円、土地購入費として6,111万2千円を計上している。また執行中止をとのことであるが、さきほども答弁いたしたが、引き続き、整備促進に努めていくものである。

 

(畑中2問目)債権放棄について、債権の放棄が対外的に法律効果を生じるためには、市の執行機関つまり市長が野村宣一氏に対して債務を免除する旨告知するなど執行行為(意思表示)が必要であると考えます。野村市長は野村宣一氏に対して債務を免除する執行行為を行うつもりがあるのかおたずねします。

(野村市長)次に、裁判に関連して、(議会の議決に従って市長が執行行為を行うのかということについて)それはその内容によって決めるものであり、現段階で答弁するのは差し控えるものである。

 

(畑中2問目)住民訴訟とのかかわり合いについて、あらためて2点おたずねします。
団体意思決定の議案については原則的には長と議員双方に発案権があるが、当然、例外もあり、予算の提出権は長に専属することは法に明記されているが、法に明記のないものについても本質的に長の権限と責任に属する事務については長にのみ発案権があると解するのが法の趣旨です。たとえば機構改革の条例案です。第一に債権が消滅した場合の市の対応と裁判への影響についてお尋ねします。
また債権の放棄、今議会中に当該債権の放棄がなされ、必要な手続を経て、債権消滅が有効になった場合、茨木市として高裁における裁判活動についてどのような対応をとることになるのか、また、高裁での審判に与える影響について市としてどのように分析しておられるのかお尋ねします。過去のいくつかの判例からすると、債権が消滅したものとみなされた場合に控訴棄却されている事例も存在します。

第二に臨時職員への一時金支給が今もって違法であると判断されている状況についてお尋ねします。地裁判決では平成17年度に改正された(新)給与条例においても具体的な金額の決定を規則に委任しているのは、法の給与条例主義に抵触するものであり、違法であるとしています。臨時的任用職員に対して一時金を支給すること自体はしごく当然のことであると考えますが、一方で、地方公共団体の長の職務執行は厳密に法令に則って遂行されなければならないのは言うまでもありません。上級審における裁判の行方がどう進むのであれ、場合によっては、平成17年度から現在までの一時金支払いも違法な公金支出であると見なされるおそれがあるといえます。茨木市は早急に所定の条例を改定し、支払う側もそして支給される側も一点の曇りも無いように対処すべきであると考えますが、茨木市の見解を求めます。

最後に、(今回の債権放棄の議案提案への)市の働きかけについて、市のこれまでの行動に強く抗議すると共に、今後債権放棄に関して、市の一切の行動を中止するよう強く求めます。見解を求めます。2問目以上です。

(津田副市長)まず一点目。この議案の提出権が長に属するのではないかということであるが、これは先ほども答弁したように、議員、長両方が提出できるという解釈をしている。

 次に、債権放棄について、法の趣旨というか、司法の判断をゆがめるのではないかということであるが、裁判所はそれぞれの法令・条例の解釈に従って判断を行うものであるので、給与条例主義の法令解釈について高裁と地裁が異なるというケースも当然考えられる。しかし本件で債権放棄をしたということと司法の判断とはまったく違うものであるので影響を与えることはないというふうに解釈をしている。

 次に、こういう形の債権放棄の例であるが、東京高裁において、いわゆる住民訴訟の判断と、それから市の判断、議会の判断、議決をすると言うことについて、決して住民訴訟の趣旨をゆがめるものではない。

 一切の債権放棄の行為を止めよというご要望というか、ご意見であるが、今、控訴している中でさまざまなケースが考えられる。当然、敗訴するケースも考えられる。そういう場合、市としてとれるいろんなケースを想定して、債権放棄の提案をお願いしているということであるので、この行為を止めるという考えはまったく持っていない。

(給与条例の改正について)司法の解釈としては、給与条例主義というのがいわれている。しかし、市としては給与条例の中にすべての職種の賃金・報酬等明記されてはいないが、平成18年の11月議会において条例の一部を改正し、その中で規則に委任しているものだが条例に明記している。このことは今現在、高裁の方にも市の主張としているので、現時点ではそれが給与条例主義に反しているものではないと考えている。また、全国ほとんどの自治体も同様の形で定めている。したがって、今回も裁判結果は全国の多くの自治体に影響を与えるものと考えている。今現在、その件について争っている内容である。したがって今の給与条例は市としては適法であると考えている。

 

(畑中3問目)一審の判決までの間に、17年度にも給与条例を一度改正しているわけですから、おなじようなことでしっかり改正するべきだとあらためていたします。また市の働きかけについても今後いっさい中止するようあらためて強く求めまして私の質疑を終わらせていただきます。

 


 反対討論「議員発第11号 債権の放棄について」(08.06.26)

 議員発第11号 債権の放棄について、日本共産党市会議員団を代表いたしまして反対の立場からの討論をおこないます。

 今回の議員提案は、平成20年1月30日の大阪地方裁判所の「平成16年度に野村市長が市に勤務する臨時的任用職員に対して法で定められた条例の規定によらずして一時金を支給したのは違法である」との判決を受け、茨木市が個人である野村宣一氏に対して所有する損害賠償請求権、具体的には6689万円および遅延損害金を内容とする債権を放棄するというものです。

 本議員提案に反対する理由の第一は、この議案の提出権はそもそも市長のみに専属性があり、議員に提案権はないからであります。

地方自治法の96条には議会が議決すべき事件が制限的に列挙されていますが、こうした議決事件のいわゆる「議案」は原則的には、議員と地方公共団体の長の双方に発案権があると解されています。しかし事項によっては長にのみ発案権があるものや、また議員にのみ発案権があるものが存在すると解されています。前者の代表例は予算案の提出権ですが、たとえ予算のように法律上に明文化されていなくとも、事件の性質によっては長に専属性があると解されるものがあります。たとえば債務負担行為の設定、機構改革の条例、職員定数条例、公の施設の設置・管理条例などが挙げられます。その趣旨は、こうした事項は本質上、長の権限と責任に属するものであり、それがゆえに発案は長に専属すると解されるのです。

そこで今回の債権放棄の議案に当てはめてみると、「債権」つまり地方公共団体の財産の取得、管理、および処分については長の担任事務であると法律に定められています。その上、こうした財産の管理に関しては、法令は数々の条文をもって長に制約を課しています。市民の財産の管理というのはそれほど厳格に行われるべきであるというのが法の要請です。したがって議員がこうした法令のなんの制約もなしに財産を対価も無しに消滅せしめる債権放棄の議案を自由に提出できるとすることは法律はそもそも予定していないものであると考えます。

また、旧自治省の見解でも「執行機関の執行の有効要件としての議決については議員に提案権はない」としています。長がその権限に属する事務執行の前提として議会の議決を要するものについての発案権は長に専属するのです。債権放棄についても議会の議決だけで効力を発するものではなく、議決自体は団体としての内心の意思を決定するに止まり、法律行為として効力を発するには議決後に長の執行行為が必要であるということからしても、本議案を議員が提案する必要性・必然性は全くありません。

 本議員提案に反対する理由の第二は、住民訴訟が終結し、判決が確定した後であるならばともかく、いまだ訴訟が継続されている中での、本債権を放棄する行為は、住民訴訟の制度をないがしろにし、ひいては住民自治そのものを否定する行為であり、議会の裁量権の逸脱ないしは議決権の濫用に当たるからであります。

 今議会で債権の放棄がなされ、野村市長が執行行為をおこなうと、裁判での争いの焦点である債権は消滅し、係争中の高裁における審理にたいして致命的な影響を与えることになる可能性は充分予想されます。過去の事例からすると債権の消滅によって控訴が棄却された例もあります。法律で保障された権利を適正な手続を踏んで行使し、住民と行政のあいだに争いがある中で、一方の行政側の要請に唯々諾々と応じて、議会が場外から住民訴訟に横やりをいれて、立ち往生させるようなことは住民の代表機関である議会の本分からしてあってはならないことであります。

たしかに法律は、議会の権能の一つとして、債権放棄の議決を認めていますが、それはきわめて限定的であります。例えば法令や公序良俗に反する議決はできないことはもちろん、学説では「およそ公益性のない権利放棄はできないのであって、住民訴訟における裁判所の判断を無にし、あるいは訴訟の遂行を阻害する目的での議決には公益性はみとめられない」としています。

また「議会の議決を経たからと言って、長が合理的な理由も無しにおこなう権利の放棄は実質的に公益上必要がない寄付または補助に当たり、それ自体が住民訴訟の対象となる」という考えも示されています。

住民訴訟は、憲法の地方自治保障を実効あらしめるために自治権の司法的統制の一手段としてきわめて重要な役割を担っています。このような議会による損害賠償請求権放棄が節操も無しにまかりとおれば、今後、住民訴訟は事実上機能しなくなり、住民による公金の不正支出の是正はきわめて困難になります。原告である住民からすれば、現行法制度上、議会による権利の放棄を防ぐ手だてはありません。言い換えれば、議会に対して処分禁止の仮処分が出来ない以上、法のバランスから考えても議会が住民訴訟から生ずる損害賠償請求権の放棄をできないと解釈するべきです。

 本議員提案に反対する理由の第三は、野村宣一氏に対する債権放棄そのものに正当性がないからであります。

 そもそも今回の大阪地裁判決は、市長責任の免罪及び様々な事情についての茨木市の主張を「ことごとく根拠がない」として退けています。従ってこの地裁判決の趣旨を尊重するのが、現時点における議会の正しい選択です。

もちろん党議員団は「茨木市が臨時職員に対しても、一時金を支給すべきである」と一貫して主張してきました。だからこそ過去においても、現在においても、その立場から、現行制度の様々な問題点を指摘し抜本的な改善を求めながら、現実的な対応をしてきました。しかし同時に大阪地裁判決が示したように、「地方公共団体の長が厳密に法令に則って行政運営をおこなうべき」ことは基本であり、地方自治法と地方公務員法は複数の条文にわたって再三きびしく「給与条例主義」をうたう立場からも、法令の厳密な運用を求める大阪地裁判決はきわめて道理のあるものと考えます。

しかるに野村市長は平成16年当時旧給与条例の委任規定に基づく規則すら制定しないまま、市長の裁量のみで一時金の支給を行ってきた事、また平成17年度に改定した「新給与条例」についても、党議員団の指摘にも関わらず、大阪府下の多数の市町村の規定を細密に検証することなく踏襲し、結果的に立法の趣旨や沿革および国による数々の関連通知の解釈を誤ったままで、具体的な額の決定基準を盛り込まず、結果的に今回、法律違反と認定されるに至りました。しかも現時点でも、この立場に固執しています。これらのことからみても野村市長は注意義務違反による過失によって、新旧両方の条例ともに違法状態を解消する努力を怠ってきたといわざるを得ません。したがって長をチェックする機関である議会は、現時点においては、安易に免責すべきものではありません。

さらに茨木市は「職員から労働の対価をえているから、実質的な損害はない」と主張していますが、もとより一時金つまり期末手当は生活給であり、労働の対価として支払われるものではない以上、こうした主張も違法性を逃れる根拠にはなりえません。そもそも大阪地裁判決は、「給与条例主義」を規定する法律は、もろもろ存在するすべての事情を考慮した上で、それでもなお「いかなる給与その他の給付は条例に基づかずには支給できない」との立法趣旨から、厳しく求めているものであり、「目的が正しければ、多少の法令違反があってもかまわない」とする論理も厳しく戒めています。また「給与条例主義」は予算による「おてもり」の承認を排し、条例制定による議会のチェックを求めているのです。

質疑の中で、この6月30日の支給はどうなるのかという趣旨の質問もありましたが、そもそもこの6月議会において地裁判決の判決趣旨に従った遡及事項付きの条例改正案を市長が提案すれば良かっただけのことであります。これからでも遅くありません。高裁判決が9月初旬だとありましたが、その後の9月議会ででも、これまでの支給分もさかのぼって法的に有効になる規定を設けた地裁の判断に準じた条例改正を行えばよいのではないでしょうか。条例には正規職員の給与については俸給表を持って微に入り細にさだめられています。臨時職員についても条例にさだめられない理由はありませんし、地裁判決では個々の額までは規定しないまでも具体的な額の決定基準さえあれば良いと判断しています。臨時職員に支給した一時金を返せと言う話になるのではないかという話も、そもそもなんら法的根拠がありませんので住民訴訟制度を始めいかなる法制度からしてもそんな判断が下ることはありえないので論外であると、念のため付け加えさせてもらいますし、またありえないことで不安を煽るのはいかがなものかと考えます。

以上、本議員提案に反対する三点の理由を挙げ、討論といたします。議員各位の賛同をよろしくお願いいたします。

(参考条文)
地方自治法204条3項 
給料、手当及び旅費の額並びにその支給方法は、条例でこれを定めなければならない。

地方自治法204条の2 
普通地方公共団体は、いかなる給与その他の給付も法律又はこれに基く条例に基かずには、これを第二百三条第一項の職員及び前条第一項の職員に支給することができない。

地方公務員法24条6項
職員の給与、勤務時間その他の勤務条件は、条例で定める。

地方公務員法25条
職員の給与は、前条第6項の規定による給与に関する条例に基いて支給されなければならず、又、これに基かずには、いかなる金銭又は有価物も職員に支給してはならない。