[朝田 充]平成22年6月定例市議会 本会議質疑、討論

◎議案第号 

◎議案第号 

◎議案第号 

◎議案第54号 

◎議案第55号

◎請願第2号「一般家庭・中小事業者の上水道料金の引き下げと下水道料金の据え置きを求めること」について~賛成討論 


議案第8号 


◎議案第54号および議案第55号反対討論と請願第2号賛成討論

 議案第54号と議案第55号、及び請願第2号について、一括しての討論ですので、私は日本共産党茨木市会議員団を代表して、請願第2号に賛成し、議案第54号と議案第55号に反対する立場から討論を行います。

その前に、今回の請願は、現在、11,323筆であるとお聞きしています。

請願第2号「一般家庭・中小事業者の上水道料金の引き下げと下水道料金の据え置きを求めることについて」では請願項目の1.として、「上水道料金は大口使用者の料金を引き下げて、一般家庭・中小事業者やマンション居住者等にしわ寄せする料金体系の「改悪」はやめて下さい」とありますが、願意はもっともであり、黒字還元・水道料金の引き下げというのであれば、市民公平に引き下げるべきであります。
まず第一に、質疑を通じて、水道事業における平成21年度の累積利益剰余金は18.5憶円という答弁でした。これを水道料金引き下げで還元すること自体は当然です。大切なことは黒字還元は、全ての使用者に公平に行われなければならないということです。ところが、本市の場合、「使用水量が減少しても、将来にわたって安定的な水道事業の財源が確保できる料金体系を構築する」と、結局、大口水道使用者は大幅値下げを行い、小口水道使用者、小口一般家庭は逆に値上げを押し付けるという「料金体系の改変」とセットの不公平な「黒字還元」となっています。ここに、黒字還元・平均では引き下がっていますといっても賛成できない理由があります。特に口径13~25㎜の一般家庭において、月使用水量・10~11㎥の世帯、比率でいえば約3割の世帯が黒字還元の恩恵をうけず、逆に値上げになってしまうということは重大問題であります。これらの世帯は一人暮らしや高齢の年金生活者の世帯であり、お風呂や洗濯の回数を減らす等で、節水に心がけ家計のやりくりをしている世帯であります。一方、大量水道使用施設の場合は、今回の料金体系の改変で大幅値下げとなり、例えば、口径75㎜、月使用水量5,500㎥では、その値下げ率は32%にもなります。こんな不公平な措置は中止し、直ちに全ての使用者にその利益を享受できる黒字還元・値下げ措置を実施するよう求めるものであります。
第二に、今回の「水道料金体系の改変」の考え方そのものが、請願者や市民の願いに反するものであり、根本的に間違っていることを強く指摘いたします。今回の料金体系改変の考え方を要約すると、「水需要が減っており、小口一般家庭の使用水量減少もあるが特に大口の減少が著しい、しかも大口の地下水転換がさらにこの減少傾向に追い打ちをかけている、従って水需要減少の時代においては、安定的な財源確保のために基本料金を引き上げ、従量料金を引き下げる。さらに、大口にもっと水を使ってもらわなければならない、大口の地下水転換をくい止めなければならない、ということで従量料金において逓増度を緩和し、大量使用料金を大幅に引き下げるのだ」と、こういうことであります。委員会の質疑でも過大な水需要予測、それに基づく無駄なダムなど、過剰な水資源開発も時間はかかったが正されてきている、今度は水需要が減ってきているもと、料金体系においても同様の議論をすべきだ、といった主張もありました。しかし問題は、どういう立場で議論するか、ということです。私たちは、適正な水需要予測においても料金体系においても、水道事業の第一の使命である「生活用水の安定的かつ低廉な供給」という立場で一貫しています。
大口水道使用者、特に超大口といわれる大手企業にもっと水を使ってもらわないと、ということで今回の改変は、大手企業を大幅に値下げし、一人暮らし家庭は逆に値上げという措置を取るわけですが、しかしこれは逆立ちした間違った選択であり、「生活用水の安定的かつ低廉な供給」に反するやり方です。この理屈は今話題の消費税増税の議論とうり二つであります。今回の消費税増税は初めから法人税減税とセットの話となっており、日本は法人税が高いから企業が海外に出ていく、これを引き留めるために法人税減税だ、その財源は消費税増税だ、というわけであります。大手企業の水需要を取り戻すという今回の理屈と寸分の違いもないではありませんか。日本は法人税が高いというのは事実に反し、「研究開発減税」「外国税額控除」など、さまざまな大企業優遇税制があり、実際の法人税負担率はヨーロッパと変わらない30%程度であり、中には名だたる大企業でも10%、20%しか負担していない企業もあります。日本の法人税が高すぎるなどという根拠はまったくありません。第一、この間、ずっと法人税率は引き下げられてきましたが、大企業の身勝手な海外移転への歯止めにはまったくならず、問題解決をいうなら、こうした身勝手な行為そのものに対する規制こそが必要であることはあまりにも明白です。まったく同じことが、今回の水道料金体系改変の場合にもいえます。茨木市は大口の水需要減少を根拠に「一部利用者、つまり大手企業に過分な負担を強いる料金体系は見直しが必要」といいますが、生活防衛のために一般家庭が行う節水と、大口使用者、特に大手企業の使用水量減少の問題は全く質的に違う問題であるということを強調しなければなりません。大手企業の使用水量減少は、その主たる原因は、経済活動の停滞、先進国の中で、日本だけがGDPが伸びていない「成長の止まった国」、同じく雇用者報酬が減少する「国民、市民が貧しくなった国」になってしまった、ここに主たる原因があります。さらにこの経済の停滞は何が原因かといえば、正規雇用から非正規雇用への置き換え、つまり雇用の不安定化と市民負担増・社会保障削減路線により家計消費が冷え切ってしまっている、内需が極端にまでしぼんでしまっている、すなわち、大手企業と本市も含め行政が進めてきた間違った施策にこそ原因があります。そこを反省しないで、それどころかこれをさらに推進するということは、一層の悪循環におちいることは間違いありません。今回のような大手企業に大幅な値下げを行っても、使用水量は戻らず、値下げした分は、内部留保に回るだけでしょう。3割にもおよぶ小口の一人世帯、高齢者世帯にしわ寄せし、ここに値上げを押し付けることは、市民との矛盾を広げるでしょう。この点は厳しく警告するものです。
第三に、大口使用者の地下水利用等への転換問題については、これを理由に今回の料金体系改変を合理化するというのはまさに邪道だといえます。地下水ビジネスとコスト競争に踏み出すという今回の体系改変の考え方では、それこそ際限のない競争、そのしわ寄せはやはり一般家庭にかぶせられ、「生活用水の安定的かつ低廉な供給」に反するやり方です。「地下水専用水道使用者に新たな特別な負担を求める」あるいは何らかの規制を検討・実施するべき時期にきていることを強く主張するものです。
第四に、「受水槽」付き分譲マンションの特別料金計算制度廃止・「各戸450円基本料金方式」の新設は、いわゆる市が設置する親メーターと管理組合による各戸子メーターによる水道料金の「差額」が、多額の経費を要するマンション内水道施設の定期点検と補修工事の貴重な財源の一部となっていることに鑑み、現行の特別料金計算制度のまま存続すべきです。あるマンションの管理組合にご協力いただき、実際のデーターを出してもらい、現行と今回の改定とで比較計算してみましたが、現行の場合、差額が年・176万円であるのに対し、新制度適用だと年・45万円に激減してしまいます。これでは管理組合の会計に大きな影響を与え、結果的に新たな居住者負担の増大となってしまいます。マンションに対する支援策ともとらえ、現行制度の存続を強く主張するものであります。
第五に、算定期間における水道の財政計画書をみても、今回の水道料金改変は避けがたいものとはいえない、ということです。確かに有収水量の減少による給水収益の減、これは確かにマイナス要素であります。しかし、収益における分担金の増加や水道事業費用の減少等のプラス要素も見込まれており、料金算定期間内における累積利益剰余金も、黒字還元をしても経営の安定のため約7億円残すものとなっています。経営上もマイナス要素もあればプラス要素もある、総じて、今、この体系改変をしないとすぐさま経営危機に及ぶというものではない、市はそういう危機感をあおるわけですがこれは適切ではない、というのが冷静な財政分析であります。ならば、何度も言いますが、現料金体系のもとでの公平な黒字還元・引き下げこそ、今、やるべきであります。
第六に、他市と比べても茨木市の料金体系改変の考え方は突出したものであるということも指摘いたします。吹田市では本市に先駆けて逓増度の緩和を図ったが、大量使用の減少への歯止めとはなっていないことを指摘しました。これに対し答弁では「吹田の値下げはごくわずかで、地下水利用者に競争できるわけがない」といいました。しかし、吹田市の結論はそうした価格競争に踏み出すものではありません。「現行水道料金の維持」が結論であります。高槻市の公営企業審議会の答申書「水道料金体系のあり方について」では、更に踏み込んで「水道事業は、公営企業として自主・自立的な経営を行なっていくため、受益者負担に基づく『独立採算制』が適用されてきたが、今日水道事業に起因しない外部的、社会的な要因で水需要が減少し続けており、このままでは経営収支が悪化し、公営企業の責務を果たしていくことが危ぶまれている。…節水がもたらす外部効果を貨幣的に計測し、水道会計に繰り入れることによって『収入』の概念を広げるなど、現行の独立採算制概念の見直しも検討に値しよう。」と述べています。水道経営の範疇では責任が持てない外部的、社会的要因で水需要が減少しているのだから、一般会計からの繰入、現行の独立採算制の見直しも検討に値すると踏み込んでいます。いずれにせよ、本市のように「大口使用者の使用水量落ち込みは、本市が過度の負担を求めているからだ」「地下水への対応手段は価格競争」という呪縛にとらわれてしまうと、結局は、大口の負担を一般家庭にかぶせていく際限のない市民負担増路線に突き進まざるを得ない、公営企業としての責務を投げ捨てただの営利企業に転落しかねない、今回の質疑で明らかになった茨木市の態度というのは他市と比べても突出した考え方ということを厳しく指摘します。

次に、請願第2号では請願項目の3.として、「下水道料金の引き上げを回避するため、一般会計からの繰入額を堅持して下さい」とありますが、これも願意もっともであります。
今回の下水道使用料の値上げ提案は、10月からの資本比率55%の値上げでは、平均20%の値上げとなり、平成24年4月からの資本比率60%の値上げでは25%の値上げとなります。市民的影響は絶大です。これまで、茨木市は料金抑制のため、年間約20億円一般会計から繰入を行ってきました。ところが「厳しい下水道会計」「独立採算の原則」を持ち出し、この繰入額を年間約7億円減額したいというのがその動機です。しかし、先ほどの水道の所でも指摘した通り「現下の経済情勢」を鑑みれば、庶民を更に窮地に追いやるような公共料金の値上げは、政策的にも、今、絶対やってはならない禁じ手であり、これまでの料金抑制のための一般会計からの繰入は正しい判断であり、今こそ繰入額を堅持すべきです。下水道財政上も今、これをやらなければならないというひっ迫性はありません。拡大の時代から維持の時代に入り、確かに有収水量の落ち込み、維持管理費の増加傾向というマイナス要素もありますが、資本費の減少等のプラス要素もあり、結局、料金算定期間内において、現行のままでも一般会計繰入金がどんどん膨らんでいくという状況ではなく、逆に緩やかに減少ということが言えます。マイナス要素を過度にあおりたて、危機感をあおるというのは適切な対応ではありません。さらに、水道にしてもそうなのですが、これだけ普及した下水道事業は、公営企業方式一本やりでは市民も納得しないし、もう持たなくなってきているといえます。下水道事業においては公営企業というより公共性を全面に押し出し都市計画ととらえ直し、施策の推進を図ることが肝要であり、その意味でも現在の繰入額の維持は正しい政策的判断であります。結局、下水道会計への一般会計からの繰入をへらす真の目的は、大型開発と大型ハコモノ建設推進のための財源づくりにあり、これは優先順位として間違っている、今は、市民のくらしの安定化にこそ心を砕かなければならないと強く主張するものであります。

次に、請願第2号では請願項目の2.として、「引き下げ予定の大阪府営水道料金の更なる大幅な引き下げを府に求め、茨木市の上水道料金を最大限引き下げて下さい」とありますが、これについては、質疑で指摘した通り、府の試算においても給水原価はさらに下がる見込みであり、更なる引き下げを求めるものであります。答弁では「難しい」としながらも方向として「更なる引き下げは求めていきたい」ということでした。そこは後押ししながらも、その場合の黒字還元は、高槻市や箕面市の対応のように全ての使用者に公平に行うことを強く求めます。

以上、請願第2号に賛成し、議案第54号と議案第55号に反対する立場から意見を申し述べました。議員各位の賛同をお願い申しあげまして、討論を終わります。