2006年3月13日
茨木市情報公開審査会
会長  池田敏雄殿

 2006年2月27日に茨木市長野村宣一(以下、「実施機関」という)が提出した弁明書に対し、以下のとおり反論する。
1.弁明書にはその理由について、何ら根拠がない。したがって、すみやかに「実施機関の決定は妥当ではない」との答申を求める。
2.反論書を提出する理由
茨木市立保育所民営化基本方針(案)(平成17年12月22日開催分)以下、「本件文書」という)の内容とその重要性について、および情報公開の必要性については、異議申立書に記載の通りである。

公開しない理由の妥当性についての反論

条例第7条第5号について
@実施機関が「本件文書は市立保育所の民営化についての市内部における検討段階の情報であり、最終的な意思決定をされた情報ではない即ち未熟な情報である」と主張する点について
茨木市は2004年9月に市民や関係者代表、学識経験者等を参加させ、「公立保育所あり方に関する懇談会」(以下、「あり方懇」という)を設置し、6回の議を経て2005年9月に意見書の
提出を受けた。「本件文書」はこの意見書を受けて、2005年10月に、「茨木市保育所民営化検討委員会(委員長、南邦彦助役)」(以下、「民営化庁内検討委員会」という)を設置し、「本件文書」の策定を含む5項目について検討を行うために会議を開催し、同年12月22日開催の第三回目の会議で検討委員会の結論として、全会一致で「本件文書」を決定した。この「民営化庁内検討委員会」は担当助役を委員長に、関係部長及び庁内関係の9人の課長等で構成し、いわば茨木市が庁内で種々な重要方針を決定する最高機関に準ずるものである。よって通常であるなら、「本件文書」は即日、市長の元に届けられ、市長が若干の修正を加えても、正式に「民営化基本方針」として決済されるいわば熟度の高い文書である。たしかに「本件文書」はその後の市長決裁を受けて、正式決定文書となるが、そのことを持って、「検討段階の未熟な情報」と主張するのは形式的な弁明理由である。また(案)だから「検討段階の未熟な情報」というのか、内容が「検討段階の未熟な情報」というのか、弁明の趣旨そのものも不明確である。
事実経過の上でも、その後2006年1月24日に「本件文書」を元に「茨木市立保育所民営化基本方針」の市長決定が行われ、同年同月27日に記者会見、翌28日の朝刊各紙で報道された。なお記者会見が行われた同日、異議申立人に、市総務部松本信隆理事と同児童福祉課小林英治課長が「本件文書」を持参し、「本件文書」非公開決定処分異議申し立てを取り下げるよう申し入れがあった。この時、持参した「本件文書」は、発表した「茨木市立保育所民営化基本方針」と全く同一で、「検討段階の未熟な情報」という、実施機関の主張に何ら根拠のないことがあらためて事実を持って証明された。

A実施機関が「本件文書」を公開すると「市立保育所民営化について、不正確な理解や誤解を与えるおそれ及び市民の間に混乱を生じさせるおそれがある」と主張する点について
実施機関は「政策等の意思形成過程への市民等の参加の促進を図り持って開かれた市政の推進に資する」として茨木市パブリックコメント実施要項(2005年4月実施)を定めている。この要綱の第2(定義)では、パブリックコメント手続とは「市政の基本的な計画等の立案過程において、その趣旨や案の内容等を広く市民に公表し、これらについて、提出された意見、提言を考慮して、意思決定を行う手続きをいう」としている。また第3(対象)「市の基本的な政策に関する計画等の策定、または重要な改定」とし、さらに第4(公表時期及び公表資料)では、「実施機関は、計画等の立案をしようとする時は当該計画等の策定の意思決定を行う前に、当該計画等の案を公表するものとする」としている。まさに「本件文書」はここでいう当該計画等の案に当たるものである。(案)であれば、すべて「市内部における検討段階の情報であり、最終的な意思決定をされた情報ではない即ち未熟な情報である」というのなら、パブリックコメント手続そのものが成立しなくなる。また本来ならば「本件文書」は「茨木市パブリックコメント実施要項」にもとづいて、「手続」をとるべき内容のものでもある。しかるに実施機関は自ら決定した手続きに違反して、「本件文書」による「手続」を実施しなかった。そしてその理由について、「検討段階の不確定な情報が市民に混乱を生じさせることも考えられた」と「本件文書」非公開決定と同様の理由を挙げている。しかし「本件文書」の内容を見れば、実施機関の主張に合理性や根拠がないのは明白である。また他の事例では、同様の「庁内検討委員会」が策定した計画等の案が案の段階で公表されている。また「本件文書」がパブリックコメント手続等の理由で、「非公開決定」というのなら、通知書に「  年  月  日以後であれば、公開の請求に係わる公文書を公開することができますので、同日以後にあらためて公開の請求をしてください」と付記すべきものである。

B条例第7条第5号は「未成熟な情報であって、公にすることにより、市民に不正確な理解や誤解を与えるなど不当に市民の間に混乱を生じさせるおそれがある情報に限って、非公開にすることができる」旨を定めている。「実施機関」は、市立保育所民営化をめぐって、市民や関係者の様々な反応や行動をもって非公開処分の一つの理由としているが、そうした市民の反応はむしろ市政の遂行にとって、きわめて有益なものである。結局、「実施機関」は「よらしむべし、知らしむべからず」という封建時代の為政者の考え方と同様であり、およそ民主主義の基本と相容れないものである。

Cよって上記@ABの理由により、「本件文書」が条例第7条第5号に該当しないのは明白である。
                                                          以     上

公立保育所民営化基本方針案情報公開反論書